こちらは複数のブログを統一するため、他ブログで公開していた記事を移転・大幅に加筆・修正したものです。
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“ちょっとそこまで”のつもりで受験したらエラいことに
近年、登山をするのに、最低限の準備をしない、しかも軽装で救助される人が増えているらしいですね。
まさに、無計画・準備不足・場当たり的・自己過信。
と、登山経験がない人でも思うことでしょう。

家族・友人がコンビニ行くような恰好で「富士山の頂上を目指す」と言い出したら誰でも本気で止めますよね?
でも、不思議なことに、受験や教育に関しては、こういうことが結構まかり通っています。
草野球しかしたことのない、もしくは野球をしたことがなくてルールも知らない素人が、短期間で簡単にプロになれると錯覚する・錯覚させる風潮が、教育の現場においてはよく見かけられるのです。
登山って、基本的に結構お金がかかりますよね。いろんな道具・装備がありますし。
事前の準備(登山ルートを調べたり食料や道具を用意したり)はもちろん、経験や知識も必要とされます。
それと、危険だと判断したら、引き際もよく見極めなければなりません。
受験もいろいろな準備や心づもりが必要です。
それと費用面の相場がわかっていないと、志望校を目指すためにはどの程度の学力を上げないといけないか、そのためにはどれくらい予算が必要で、家庭の方針としてどこまで出すのか・出せるのかの判断もできません。
特にそのご家庭にとって初めての受験である場合、その線引きが非常に難しいかもしれません。
例えば中学受験では、失敗しやすい行動パターンというのがある気がします。
※以下はあくまでも一例です。教育業界で実際に見聞きした話やいろんな書籍、サイトを参考にしています。見づらい場合は画像をクリックして拡大してください。

家庭教師で見てきた経験も含めると、冷静に先を見通している親御さんは、志望校に合格するためにどれだけの勉強量が必要で、どれだけの費用が掛かるかをきちんと調べた事実を受け止めた上で、家庭の方針や予算との兼ね合いを考えながら、有名であるとか難関校であるかとかではなく、子供の個性や特性にあった学校に入学させてますね。
意外に最初から持ち家でなく賃貸に住み続けながら中学受験終了後に家を購入しているご家庭が多かったですね。
子供が合格した学校がある他府県に引っ越したご家庭もありました。
ダイエットや整頓などと同じように、飽きっぽくてすぐ成果を求めがちな人は、あれこれ手を出した結果、挫折してしまうことが多いと思います。
これ、病気で入院することになって、急に焦ったり、騒ぎだしたりする人にも似ているかもしれませんね。
受験の病と本当の病はどこか似ている
悪化してから来てるから手遅れの場合も多い。

もっと早くから受験のための学習を始めるべき。
それと、成績をどん底まで悪化させないため、適切に費用をかけるべきだった。
口頭で説明する内容だけで判断して治してくれと言う。

苦手分野を把握しないと的確な指導もできない。
生徒さんが成績表を出したがらないのはよくある話ですが、たまに模試や学校の成績を見せたがらない親御さんもいます。
てか、塾に見栄を張ってどうするんですか!
まさか、できないことがわかると”コマ増やせ”って脅されると思っておられるのだろうか…?? いや、別に脅しつけたりせんし。

指示通りに学習しない。
必要な資料も出さない。
絶対に受けた方がいい模試も受けない。
ないないない尽くし…。

学習を始めてすぐに成績向上を期待する人がいる。
もうこれまで何度もお伝えしているが、学力は栄養と同じで、急には身につかない。
例えば、現在中1として、12年間不足していた栄養(知識・学力)を、たかが数カ月~半年程度で完璧に取り戻せると、本気で考えていますか?
完全に自分の実力にするには、せめてこれまでやってこなかった時間分の努力・費用は必要だと覚悟してほしい。
でも、やればやった分だけ、栄養(知識・学力)は必ず身に付くし、一度ついた実力は一生の武器になります。
暴飲暴食して服薬も怠っている患者が、”なんで良くならないんだ!!”と当たり散らしていたら、
「そうだね。わかるよ。」って共感しますか?
病気なら「そりゃ治るわけないわ」って客観的に判断できるのに、なぜか受験になると判断が鈍ってしまうんですね…。(単純に受験に関する知識・情報不足ってのもあるかもしれませんが……)
これまでずっと、成績がなかなか上がらない生徒さんと親御さんに、”その学習法、学習習慣では駄目。学習時間も全然足りない。模試もどんどん受けようよ!”
などなどと、懇切丁寧に説明、してきたんです。

でも、やらないんだよォ~~~~!
もうね、
- 早く寝ないと朝がつらくなるのにズルズルとゲームをしてしまう。
- 運動した方が健康になるのはわかりきっているけどダラけていたい。
のような、自分でも「ホントこのままだとヤバい」と思っているのか思っていないのかすらわからないが、”やらない”、というか”やれない”ことにしておきたい。(だって罪悪感持ちたくないから…。)
という状態に似てますね。まあ、わからんでもないけど…。
このままでは”ゲームオーバー”になるかもしれないのに。カウントダウンがもうすぐそこまで迫っているのに…。
ひょっとしたら、なにかババーーン!と魔法みたいなやり方(しかも無料で)でとっとと成績上げてくれそうな、ミラクルを起こしてくれそうな、そんな方法がどこかにないか、そんな大逆転を期待している人もいるのかもしれない。

そんなミラクルあれば、自分の学生時代に知りたかったッス。
急激なミラクルはないかもしれないけど、素直に指示通りに学習してくれれば、成績は上がるんです。
時間はかかっても、絶対に上がる!
とりあえずここで、やらないといけないことはわかっているけどやりたくない学生の皆さんに、塾長が実際に見聞きした例をご紹介しときますね。
ずいぶん前に大学受験を指導した生徒がね、受験末期にめっちゃ嘆いていました。

あ~~!あ~~!(←本当にこう身悶えてた)
もっと前から勉強、しておけばよかったぁ…
って。
その子は中学受験して、当初の志望校ではない私立校に通っていたけれど、もう結構早い段階から中だるみしていました。
塾長が家庭教師に行った高3になる頃にはもう成績がどうしようもないほどダダ下がりしていました。
それでも、一生懸命指導して声掛けをした。
でも、やらなかった。
中学受験で望まない学校に通うことになったのに、それでもやっぱり、全然響いていなかった。
大学の話をしても、

A大なら彼女できるかも♪

と言いつつ、勉強する手元はなかなか動かないんだけど、難関大学への希望だけはどんどん膨らんでいました。
そして、いざ受験してみると、彼はA大や同じレベルの大学を全部受けて落ちてしまいました。
そして、高1の頃なら鼻にもかけなかったB大学すら落ちてしまい、「C大にします」「やっぱりD大に…。」を何度か繰り返し、最終的に彼はE大学に入学しました。
それでもまあ、あまりにも勉強が嫌すぎてやりたくなさ過ぎて、勉強中はもう身体が机から反り返りそうになるくらい拒否のオーラを放ちながらも、人生で初めて学習してたんじゃないかな…。
だって大学入試は学生としての集大成だからね。
「あ~~!あ~~!もっと前から勉強、しておけばよかったぁ…」

こういう叫びをもう耳にするのは大変辛いので、今も一生懸命声掛けしています、ハイ。
ついでに、エピソードをもう一つご紹介。
昔、家庭教師の依頼があって訪問したあるご家庭。
中学受験まで残り数カ月しかなく、志望校の偏差値を最低でも20近く上げないといけない状態で、
通塾している大手進学塾の講師の

ミラクルが起きて合格するかもしれません!!
という言葉を真に受け、

ミラクル起きちゃうかも!ねー?
と親子で顔を見合わせて喜んでいるのを見た時、心底身震いがしました。
手に取るようにわかります。その講師の気持ち。

だって、厳しいこと言ったら塾やめちゃうもんね。
そうでもしないと、人件費や宣伝費がかかる教室の経営を維持することできないもんね…。
よく使われる勧誘の文句として、

「入室テストで、この教科の満点はめったに取れませんよ!」
「絶対に、〇〇(難関校)に入れてみせますから、どうぞ私達にお子さんを預けて下さい」
というのがあるんですが、入塾させるためなら、プロと銘打ったところでも、平気で嘘をつくんです。
それでも、もう少しまともな塾なら、さすがに小6の秋になる頃には、きちんと現実的なことを言うんですけどね…。
そこはもう、ちょっとヒド過ぎました。
心ある人だけが、無責任なことを言ってでも売り上げを上げることを本部から強要されることに疲弊して退職していくんです…。
こういうエピソードをご紹介していると、芋づる式に思い出されることがあります。
きちんと偏差値を上げて志望校に合格するには、”正当な努力”と”適切な費用”、どちらも必要。
以前、ある著名人A氏の講演会に参加した時の話です。
前向きな言葉が幸運を呼び込むというメッセージでたくさんの支持を集めている方ですが、講演の最中にふと
と発言されました。
しかしその瞬間、聴衆の大半が一斉に落胆したような空気が会場に流れたのです。
敏感にその空気を察知したA氏が、「あれ? あはは~」と悲しそうに声を落とされていました。
また、子どもの問題行動を改善するスペシャリストのB氏がテレビ出演した時のことです。
元々児童心理学について一時期勉強していたこともあり、興味があってB氏の著書を読んでいたので、とても参考になる番組でした。
B氏も家庭環境に恵まれない中で育ちましたが、現在は教育分野の研究職を多数務められています。
B氏は海外の手法も取り入れながら、一見型破りのようにも見える、独自のスタンスで問題行動を改善していくスペシャリストです。
その手法は、常に子ども目線を忘れず、「楽しみながら」でも「守るべきことはきっちり守らせる」という至極まっとうで、ものすごく理にかなっているものでした。

やり方については、あえて詳しくは言いません。ろくに勉強もせず、その道のプロを安易に真似するのは、効果がないどころか状況をより悪化させる恐れがあります。
これは、教育についても同じで、プロが選んだテキストや教材、組んだカリキュラムさえ手に入れば後は誰が教えても一緒、と勘違いする人がたまにいますが、力量のない指導者や素人が指導しても同様の結果は得られません。
子どもは、本当に大人をよく見ています。
公共の場において、思い通りにならないと感情のままに泣き叫んで悪態をつき、人に暴力をふるう・物を破壊することをやめられない子は、親が人目を気にして困って言うことを聞くことを知っています。
特に暴言や暴力・破壊衝動に関しては、親や教師がどれほど注意して言い聞かせても、まったく改善するどころかより悪化してしまうケースが多数あります。
B氏の手法によって、そのような子供たちの行動が良い方向へ変わっていき、ギリギリまで追い詰められていた親御さんが救われていく姿はとても感動的だったのですが、
その中である親御さんの激しい拒否反応にあい、あえなく指導を断念する場面もありました。
その親御さんの言動から読み取れたのは、
でも、子どもがしつけを泣いて嫌がる姿を見せられるようなやり方を自分は受け入れたくない。
という、教育者の立場から見れば非常に矛盾したものでした。
B氏は親御さんへのケアも怠らない人でしたが、激しい反応に対して、もどかしそうな、残念そうな、なんとも言えない悲しげな表情をしていたのが印象に残っています。
しかし、子どもの問題行動に困り果てて、改善したくて来たのに、まるで自分のこれまでの考え方や方法が全否定されたように感じ、過剰反応する人がいるのも事実です。
また、B氏の著書の中でも述べられていますが、率直なプロからの指摘やアドバイスには、
と拒否しておきながら、
その一方でインスタントな解決方法ばかりを求める人もいます。
これは、教育についてもよく当てはまる事柄です。
※サリバン先生の指導法については、いまだに賛否両論ありますが。
もちろん、指導する人との相性もあるでしょう。
けれど、
と言われます。

あなたは何一つ悪くありません。そんなしんどいことをしなくても簡単に改善できますよ!
と言われれば、疲弊しきっている人は思わず飛びついてしまうかもしれません。
そして、詐欺師ほど相手が一番言ってほしい言葉をよく知っています。
当然ながら、結果的に問題行動が悪化しただけで、何ひとつ解決しなかったそうです。
教育に関してもそうですが、ものすごく都合の良いことを聞かされて「すごい塾(指導者)を見つけた!(しかも安い!)」と有頂天になっていたら、
結果的に時間もお金も無駄にしていたということがよくあります。

“当たり前すぎてつまんない” “全然ワクワクしない”
かもしれませんが、「お散歩受験」でラクラク合格は現実的に難しいです。
つまるところ、「受験合格にミラクルはない。合格に近づくには、”正当な努力と適切な費用をかける”だけ」ということです。