前回の続きです。
真綿のような”愛”で締めつける
“いい教育を受けさせたい”
“選択肢を増やしてあげたい”
ある教育ジャーナリストの方が、子どもを追い詰めてしまう言葉として紹介していました。
“子どもの可能性を信じ、将来の選択肢を増やしたい”という名目で、「最難関校を目指す」とわが子に言わせる人がいます。
あたかも勝手に子どもが自発的に希望しているかのように。
子どもは親がそう言うと喜んでくれるから、最初は無邪気にそう宣言します。
そのうち、それが容易でないことに気付きだします。
自分の学習量や学習時間では圧倒的に合格に足りないと気づきだすと、苦しくなって外部へ攻撃を始めます。
決してガリ勉タイプではない、どちらかと言うとおっとり型だった子が、徐々に反抗的になって投げやりな態度になります。
そしていつしか、
・親の顔を曇らせる存在である
という“思い込みの対象になった人間”を憎みだすのです。
自分のペースでゆっくりのんびり学習することしかできない子もいます。
今の時代、そういう子は多いかもしれません。
ですが、親御さんの求めている結果を出すには、それこそ馬車馬のように学習しなければなりません。
子育てが育児書通りにいかないように、塾は大局的なことよりも「今ここ=目の前にいる生徒」に対応した言葉を伝える必要があります。
だからこそ、親御さんの希望に対し、現実的で実践的な提案しかできません。
同時に、その希望を叶えるということは、のんびりマイペース向きな子に対して「もっともっと」「早く早く」と急き立てることになります。
子どもは締め付けられて苦しく、でも親には従うしかないから、あとはもう真面目にやらない言い訳としてすぐに他人や環境のせいにするしかありません。
そして、叱られないためなら、どんな嘘でもつきます。
後先考えず他人を陥れる言い訳をし、自分ができないことを誤魔すために他人を腐します。
勉強するよう声がけしても指示に従わないどころか、先生や他の生徒に対し学習とまったく関係ないことを言って、マウント行為を行うようになります。
それに飽き足らず、相手を侮辱的な表現で、しつこく何度も罵倒します。
真剣に受け止めて改善しようとする親御さんならまだ解決の可能性があります。
でも、
- 子どもを庇って何事もなかったことにしようとする人
- 「他の子の影響を受けただけ」」「先生が悪いだけ」と、言い訳を繰り返し、ひたすら外に原因を求める人
の場合、子どもはそれを見て、“自分に都合の悪いことが起きた時はすべて他人のせいにすればいいんだ”と学習します。
少子化の影響で、子どもたちは外部の人間に注意されなくなりました。
そのせいで、本当に相手の為を思っての忠告なのか、ただ欲望と感情のままに切れているだけなのか、見分ける力も弱くなったのかもしれません。
だから、他人よりも親の顔色を窺う子が増えたように思います。

「あなたの為」という言葉には、「自分の見栄や欲望」が隠されていることも多いです。
意識的・無意識的に刷り込まれた大義名分によって、真綿のように子供を絞めつけていきます。
殴ったり蹴ったりなどの目に見える虐待ではありません。
でも、「言葉」で、「態度」で、「雰囲気」で、ゆっくりじわじわ追い詰めていくのです。
“あなたのため”というのなら、あからさまな嘘とわかる言い訳をさせるほど、本当のことを話せなくなるほど、子供を追い詰めるな、と言いたいです。
次回はいよいよ最終回、教育虐待⑤「愛着障害と”お客様モラトリアム”」に続きます。