この記事は他ブログから移転、加筆修正したものです。
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ありそうでなかった、俳句をテーマにした漫画。
タイトルにある松尾芭蕉の句のように、高みを目指してただ一人道を進む者の孤独を詠んだ句もあれば、たとえ拙くても、「ただ伝えたい」という想いだけが溢れる句があってもいいと、思える作品です。
※ちなみに全5巻です。本音を言えば、もっと続けてほしかったです。
マンガに関しての教育効果があるかどうかは賛否両論ですが、脳科学者の茂木さんは賛成派だったと思います。
塾長自身は効果があればいいかな~と思っている程度です。
実際、マンガやライトノベルだけ読んでいても、読解力は上がらないと実感しています。
その人自身が、未知の分野や少し難しいと思える本にどんどん挑戦してこそ読解力は上がっていくのだと思います。
この漫画の舞台は屋島芸術大学(架空)です。
主人公は文芸学部に入学したての平凡(といいつつ創作の才能を秘めた)な男子大学生、尾崎流星。
1年のゼミで強制的に「俳句ゼミ」に割り当てられます。
超個性的なゼミの講師やメンバー(子連れの女学生・チェコ人ハーフ・漫画家・作家志望)たちと共に、俳句のイロハを一から学んでいきます。
この漫画の面白さは、ゼミの初回日に講師の坂本先生が放った言葉に集約されています。
“俳句っていったい何の役に立つの?という意見なんかとっくに承知の上なんだよっ”と、云わんばかりの先制パンチを浴びせながら、しっかり俳句の方へ関心を引き付ける坂本先生。
俳句初心者だらけでおっかなびっくりメンバーに、
と、そつのないフォローも欠かさない。
俳句の奥深さは、季語や切れ字などの制約を受けながら、「文字で書かれてること以上の世界観があの短さにぶっこまれて」(ゼミメンバー寺田の言葉)いること、です。
たった17文字に、心情・風景を詰め込んで表現するのは日本人ならではの文化だなと思います。
ごくたまに、大学という場所を「小中高の延長」と誤解している生徒がいます。
そういう生徒たちは、これまでと同じように、ただ席に座って与えられた知識を詰め込まれるだけで楽しくもなんともない時間の繰り返し、という思い込みがあるようです。
その為、「大学に行くと自由で楽しいよ!」と言っても、まったくピンと来ないらしいのです。
これは、身内や周囲に大学生活を経験した人がいない生徒に多いです。

ちょっと脱線しますが、親が仕事を”苦痛なもの”と感じていると、子供が働くことに対してネガティブな感情しか抱けなくなるのと似ていますね。
実際、大手求人広告会社が調査したアンケート結果によると、親の仕事の充実度と子供が将来の仕事へ抱く期待度が非常に深い相関関係にあったそうです。
前述したように、詰め込み型の教育により、”勉強はつまらないもの・苦痛なもの”と思い込んでしまっていることも、誤解の原因の一端かもしれません。
だから、様々な分野を一つ一つ深く掘り下げて学ぶことの面白さをまだ知らない人、これから大学を目指している人にこそ、読んでもらいたいです。

塾長自身の経験で言うと、大学時代に趣味で俳句をずっと作っている友人がいました。
しかし、当時の僕は苦学生(大学・大学院時代は生活の為にアルバイト漬け)で正直それどころではない状態だったのもあり、やってみたいと思いませんでした。
それに、小説は大好きでずっと昔から読んできましたし、特に長編シリーズが好きでしたが、当時は韻文(詩・短歌・俳句)の良さがわかりませんでした。
とにかく、芸術を楽しむには、心の余裕、言い換えれば心のエネルギーが必要なのだと思います。
このマンガで俳句のイロハと、そんなに身構えなくても気軽に始めてもいいのだと背中を押された気分です。
なので、これを機会に、気軽に俳句を始めたいと思っている今日この頃です。