前回の続きです。
教育虐待は連鎖する
ある生徒は、「芸術に関する仕事に就きたい」という希望を口にすることはあっても、一度も「医者を目指している」などと言う発言はしたことがありませんでした。
それにも関わらず、親御さんが提出した契約申込書には、
「志望校は〇〇・△△(どちらも関西屈指の難関校で理系に強い学校)、本人は医者を目指しています」
と書き込んでいたのです。
小学生のうちは、「東大(もしくは京大)行く!」と、無邪気に宣言する子がいます。
そう言うと親が喜んでくれるから、
親の笑顔が見たいから、愛されたいから、
そのような発言をするのでしょう。
だが、もう高3の11月になろうとしている文系のわが子に対し
「〇〇大(東京の有名大学)の医学部に入れないのか?」という親御さんからの発言に、生徒は絶句してその場で固まっていました。
表立って親に逆らったことのない生徒は、親御さんがいなくなった際にやっと、

あれ、本気で言ってんの!?
と、目を丸くして怒りだしました。
あまりの理不尽さに腹を立てた生徒の話によると、
その後は研修医だけの経験で、医師免許の必要ない医療関係の仕事をしていました。
酔っぱらうと、

文系は頭がおかしい! 医者以外はみんなクズ!!
と、よく叫んでいたらしいです。
しかし、その親御さん自身が長年芸術系の習い事をしていて、本当はそちらに対する憧れの気持ちがあったようです。
結局、その親御さん自身も自分の親の期待に応える為、無理をして医者になったが、内心自分に向いてないと思っていたのかもしれません。
親が心の底で本当は何を望んでいるのか、敏い子はきちんと見抜いています。
だから期待に沿おうとして苦しんだり、反発したりするのです。
医学部9浪の母親も複雑な家庭環境に育ち、自分の母親に初めて関心を持ってもらえたのが、「自分自身の娘(母にとっては孫)が医者になること」だったそうです。

自分が叶えられなった夢、果たせなかった願い(執着とも言う)をわが子で取り返そうとするのではなく、むしろそのような負の連鎖を繰り返さないように、親御さん自身が自分の本当の願いに目を向け、きちんと向き合うことが大事だと思います。
次回、教育虐待③「ミスを許さない親が却って子どもの学力を悪化させる理由」に続きます。